拭くということ

2019年12月26日木曜日

茶室に独り

使った茶碗を布巾で拭く。
 盆や茶匙を拭く。

 金子銀子の螺鈿や漆もある。
 茶碗にしても湯で洗ったのだから汚くはない。

 減る。
 痛む。



 だから、拭くというのはそのフリ、所作をするというだけだ。

 始末をつけるという心構え。


 それを客に見せ、主人に見せ、自分に見せる。

 そのためにこそある所作。



 だからこってりと汚れを落とそうとはしない。

 その必要もない。




 あくまでフリだけ。
 家で食事をしてもテーブルはまだしも、盆はそうは汚れない。

 しかし拭く。

 そういう手の動きをしてやる。

 それは一種のケジメだ。



 食事がこれで終わりましたという始末。

 ご馳走様と独りで言う必要はない。独りでそんなことを言っていたらおかしなことだ。

 だから無言。

 その所作で心に語りかける。ご馳走様でした、と。