茶室を覗いてみよう

2019年12月22日日曜日

茶室に独り

 日本のどこでも、地方自治体の地域センター、集会所と呼ばれる場所がある。

 集会をしたり、選挙なんかの投票所としても使われる。



 たいていの集会所には和室がひとつはあって、そこでお茶を立てられるようになっている。

 
 それこそ、茶室だっていつも使われているわけではないから、ちょっと散歩ついでに覗いてみて、もし空いていたら邪魔してみたらいい。


 何もない空間。

 薄暗い空間。


 そこに座っていると空気が動いていないのがわかる。


 なぜかいつも静かだ。



 我々はなんと騒がしい日常を過ごしているものか。


 そうだ。これと似た静けさを俺は違う世界で知っている。


 それは教会。大聖堂だ。

 あそこも同じように静かだった。だが、思い出せばどうにも明る過ぎる。





 昔、それこそ京都が今ほど観光地化されていない昭和の時代のこと。入場料だって取らなかった。

 寺の縁側に座ってじっとしていた。観光客もいない。

 一時間、二時間ぐらいその苔蒸した庭を見つめ、何かつかめるものはないかと待っていた。


 頭の禿げた寺男が来て、茶室があるから来ないかと呼ばれた。

 会話するわけでもなく、小僧の俺に茶を出してくれて、少し作法を習った。


 言葉のない会話というのもあるのだと思った。

 悟りなんてそうは拓けるものじゃない。自分の甘さが恥ずかしくなった。