玄関から庭へ 古式生活 食事 茶室でのこと

饗応と庭

 古来から日本人は、人を「食事にどうぞ」と、自宅に呼んだ。  食事に呼ぶことは人との交流の方法としては確実やり方だ。  そして手料理をふるまう。  家へ招き入れ、心づくしのものを食べてもらう。  こちらも一緒に食べながらお互いを知ろうとする。  作った同じ物を食べるという場、饗応...

茶室でのこと 武士道

胡坐で茶を点てる

あぐら。 先日の話の、先生が変わった作法を披露したことがあった。  石州流と言っていた。  確か石州流と言っていた覚えがある。  上田宗箇の宗箇流が武士の茶道と聞いた覚えがあって、変わった所作、独自のヒネったような作法が多かったから、もしかするとそちらだったかも知れないが、耳には...

茶室でのこと 武士道

一期一会

分かりやすいのは茶室で言われることだ。  茶室での一服を「出逢い」と称し、これを一期一会などと言った。  巷ではこの言葉は、偶然の出逢いに感謝しろなどというニュアンスで言われるが、それは私は違うと思う。  いつなんどき、別れるかも知れない。  そういう覚悟についての言葉なのだと思...

茶室でのこと

人と鍋をつつく

日本人の鍋の食べ方は外国人に驚かれることのひとつだ。  自分用のもの、個別の鍋ではなく、大勢でひとつの鍋を突いて食べる。  パエリャ鍋があるが、あれは取り分ける前にまとめて調理したというだけ。  追加で食材を投入して食べてゆくというのはない。  これは日本...

茶室でのこと

茶杓のこと

茶杓は抹茶をすくうスプーンのこと。 竹の今の茶匙の形状になったのは茶道の確立、利休の頃だという。 その頃は戦いの時代でもあった。  薄茶や濃茶をすくうのに適量を考えると茶杓の形状がちょうどよい。  緑茶の葉をすくう茶匙はどこか一定量ではないところがある。 ...

茶室でのこと

蓋置きの心

 釜の蓋を開けると湯気が水滴となって滴る。  こういうものはよしとしない。 茶室が湿っていてカビ臭く、畳がしなるようなところもあれば、常に乾いて乾燥し、キリッと引き締まった佇まいのところもある。  主人の心を映していると言われても仕方がない。 ポタ...

茶室でのこと

膳というもの

 膳というものがある。  昔はテーブルやちゃぶ台ではなく、目の前に銘々の膳を置いてそこに飯碗、新香などで食事をした。  正座の和室の生活から洋風の生活になり、今はほとんどの人がテーブルで食事をしている。  正座して膳を前にして食事をすることはなくなった。  ...

茶室でのこと

音を嫌う世界

 茶の世界は音にとても敏感だ。  場を乱すことを嫌うところからきているのだろう。  それは主人と客ということでもあるし、茶室と我々が作り出す空間ということでもある。  玉砂利を鳴らさない。    細かい所作にすら必ず音を意識する。  ...

茶室でのこと

湿気、湯気というもの

 釜から静かにかすかに湯気が上がっている。  その向こうで主人が所作をしている。  こちらはじっとしている。  湯気が冷たい茶室に静かに漂っている。  日本は多湿な気候だ。  それがあったからこそのこうした所作なのだと思う。  釜や風炉で湯を沸かし...

茶室でのこと

一輪挿しの花のこと

 茶室には一輪の花が挿してある。  活けてある花ではない。  茶室の花はそこに一輪だけ、そっと挿してあるだけだ。  美しさをめでるという意味はない。  茶室を洒落たデザインにする意味でもない。  それは生命を茶室に呼ぶための呼び水のようなものだ。  触媒...

茶室でのこと

人の仕事を知っておくこと

 今でこそあまりないことだろうが、昔は見当違いな人にモノを頼むと露骨に嫌な顔をされたりした。  店員に売り場など尋ねれば案内係がいるじゃないか、そんな顔をされた。  あるいは、どうみても担当ではなさそうだが、どうせ同じ社員だろうと、探すのを怠けて頼みごとなどすれば、「...