古式生活

結界とは

「結界を張る」という。  「ここから邪は入ってくるな」という警告だ。  警察が事件現場で結界を張る。  「立ち入り禁止」。  神社が祭りで所管の地区に縄を張る。  「お祭りだ」。  「邪」は邪気ということ。  それが転じて「蛇」ということに...

古式生活

橋のたもとにあるもの

 古い時代、橋がかけられることは大きな事業だった。  石橋だったり、木の橋だったり、人々は苦労して交通をつなげた。  その橋は共同体と外界をつなぐ。  だから橋をかけると同時に、そのたもとには稲荷を祀り、疫病が村に入り込まないように祈願した。  今のよう...

湯呑み茶碗の蓋

 「湯呑み茶碗」といったら、濃茶の茶碗とは違うものだ。  区別して頭に思い浮かべるだろう。  「湯呑み」と言っているのだから「茶碗」ではないわけだ。  縦に長かったり横に広がっていたり、来客などでも何気なく出される、緑茶を飲むための茶碗のことだ。  湯呑み...

食事

フォークとナイフ

 フォークとナイフ。  ナイフは舐めてはダメと言われる。  箸で言えば「ねぶり箸」に近いニュアンスと日本人には理解されているだろう。  我々日本人の感覚としては、マナーやエチケットに近いもの。  テーブルマナーとしては基本的なことだが、しかし実際にはマナーと...

武士道

人を自分の左に置く

 歩いている時、いつも自分の左に人がいてくれないと気が済まない。  自分は右利きだから、間違った態勢になっていると、自分の左側にいてもらうよう、さりげなく自分が右側に移動したりする。  それは常に相手を自分の左に置くようにするという動作になる。  それを嫌がる相手とは緊...

食事

箸と武士道

 箸というものは刀と同じようなものだ。  だからその作法には煩く注意が向けられる。  刀の鞘には小刀がついていて、鞘に差し込まれているものがある。  小刀は小太刀ではない。  小刀はナイフのようにして楊枝を削ったり、柿を剥いたり、食事に使った。  刀と食...

食事

迷い箸

 みなでつついても、鍋を清潔に食べるようにする。  だから「ねぶり箸」、箸を舐めまわすようなことはしてはいけない。  では迷い箸はどうか。  「どれにしようか」と、食卓や膳の上を箸をさまよわせる。  これがいけないとされる。  食事をするのにモノを掴む...

茶室でのこと

人と鍋をつつく

日本人の鍋の食べ方は外国人に驚かれることのひとつだ。  自分用のもの、個別の鍋ではなく、大勢でひとつの鍋を突いて食べる。  パエリャ鍋があるが、あれは取り分ける前にまとめて調理したというだけ。  追加で食材を投入して食べてゆくというのはない。  これは日本...

食事

箸使い

 箸使いは日本人特有のものがある。  同じアジアで箸を使う国はあっても、日本人の箸に対する考え方には緊張したものがある。  ただの食事をするための道具ではない。  禁じられた動き、禁忌事項さえ考えられている。  迷い箸、ねぶり箸、それぞれ特有の名前がある。 ...

茶室でのこと

茶杓のこと

茶杓は抹茶をすくうスプーンのこと。 竹の今の茶匙の形状になったのは茶道の確立、利休の頃だという。 その頃は戦いの時代でもあった。  薄茶や濃茶をすくうのに適量を考えると茶杓の形状がちょうどよい。  緑茶の葉をすくう茶匙はどこか一定量ではないところがある。 ...