人と鍋をつつく

2020年2月5日水曜日

茶室でのこと

日本人の鍋の食べ方は外国人に驚かれることのひとつだ。

 自分用のもの、個別の鍋ではなく、大勢でひとつの鍋を突いて食べる。

 パエリャ鍋があるが、あれは取り分ける前にまとめて調理したというだけ。


 追加で食材を投入して食べてゆくというのはない。



 これは日本ぐらいの習慣。



取り箸が用意されていて、おタマもある。

 豆腐をすくうなら穴の空いたおタマがある。

 各自が銘々に取ったり、誰かが世話をしてくれる場合もあるが、普通はみんなが遠慮なしに箸を入れる。


 厳密には取り箸を使うのだが、ワイワイとやっていればどうしても自分の箸を突っ込んでしまったり、食材を投入するのに肉を触った箸で他の野菜をつまんでしまったりする。


 禁忌されていることではないので当然起こること。


 だから箸をねぶったりはしないことにつながる。




みんながつつくなんて汚いじゃないかというのは西洋人がすぐ思うこと。


銭湯や温泉が不潔だということも言われたりする。



 だからなおさら、鍋が汚くならないよう、汚さないように食べる。

 共有し、お互いに配慮することが自然にされる。


 ならば各自の鍋にすれば気を遣わなくていいじゃないか、外国人はそう思う。

 そういう労を惜しむということは日本人にはない。


 みんな自分専用だからと犬食いをし、汚く食い、注意もせず食事をすれば全てが崩れる。

 緊張がなく、規律がなく、気遣いもない。

 面倒だというなら、それならいっそチューブ食にしてしまえばよいのだ。




 この鍋の汁が残れば翌日に汁にしたりもする。


 なんでも無駄なく始末をつけようとする。それが日本人の心だ。