箸と武士道

2020年2月9日日曜日

食事

 箸というものは刀と同じようなものだ。

 だからその作法には煩く注意が向けられる。




 刀の鞘には小刀がついていて、鞘に差し込まれているものがある。

 小刀は小太刀ではない。
 小刀はナイフのようにして楊枝を削ったり、柿を剥いたり、食事に使った。

 刀と食事には深い関係がある。




 食事や喫茶のため、座ったら左から右脇に刀を移したり、尻側の後ろに置いたりする作法がある。

 こちらには殺意はないという明確な意思表示だ。

 尻側に刀を置いたり、右側ではすぐには刀が抜けないからだ。

 お互いに安全を確認しあい、そして対峙した。



 今の現代でも我々はそれが分かる。

 911のテロ以降、旅客機の機内食はほとんどプラスチックのナイフとフォークになった。

 機内に武器になるものは持ち込めない。


 武士の時代、腰に常に刀があった時代はその扱いに注意することで安全を確認しあった。


 そして食事をする。

 箸を取る。


 刀と箸には強い連想が働く。



 もし信用ならない相手と対峙する時は、左に刀があると思え。
 
 手をかけておく必要はない。

 右脇には置き換えていないことを思え。


 刀がなくとも、そういう想像をして話をし、相手を伺えば油断はない。