どうぞ、と、主人が片手で目の前に茶碗を出してくれる。
いただきます。
客はそれをいただく。
茶碗を回して、いただく。
その意味はさておき、茶碗を回す時は時計回りに回す。
必ず時計回りだ。
山道を歩いていて祠などがその道を塞ぐようにして道の真ん中に通り道を塞ぐように建っていたりする。
そこを避けて先に進むとき、やはり左から回って先を進む。
できれば左側から回って一周ぐらいしておけばバチも当らない。
これは何も日本特有の文化ではない。
仏教の文化ではそういうことをする。
しかもこれは科学的にも道理にかなっていることだ。
「利き目」と言う例外はあるが、たいていの人間は右脳と左脳の仕組みから、左からまず注意を向けるものだそうだ。
つまり左から回ることには科学的な根拠さえあることになる。
左側から回って右へと回る。
それは山道の旅の安全を祈願させるものでもあり、魂を鎮めるものでもあったりする。
そういう向きがあると知っておくことは、古来からの教えを忘れた現代人にはとりわけ重要な意味を持つ。
後になってそうすればよかったと思う前に、まずもう一度古来のやり方を思い出すべきなのだ。
きっとそれは役に立ってくれるはずだ。
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