茶室でのこと

一輪挿しの花のこと

 茶室には一輪の花が挿してある。  活けてある花ではない。  茶室の花はそこに一輪だけ、そっと挿してあるだけだ。  美しさをめでるという意味はない。  茶室を洒落たデザインにする意味でもない。  それは生命を茶室に呼ぶための呼び水のようなものだ。  触媒...

玄関から庭へ

踏み石のこと

 茶室へ向かう時、寺でもどこでも、大きな庭を横に眺め、そして踏み石を踏んで向かう。  この踏み石というのが若い頃は苦手だった。  なにしろ歩幅が狭い。  そして置いてある石の間隔がいかにも中途半端に感じるから。  ひとつ飛び越して歩こうとすると撒かれた石を踏ん...

茶室でのこと

人の仕事を知っておくこと

 今でこそあまりないことだろうが、昔は見当違いな人にモノを頼むと露骨に嫌な顔をされたりした。  店員に売り場など尋ねれば案内係がいるじゃないか、そんな顔をされた。  あるいは、どうみても担当ではなさそうだが、どうせ同じ社員だろうと、探すのを怠けて頼みごとなどすれば、「...